【弁護士の解答】
【定期借家契約とは】
まずは、定期借家契約について説明します。
定期借家契約とは、契約期間があらかじめ決められている賃貸借契約です。契約の更新がないため、契約期間が満了すると借主は退去しなくてはなりません。ただし、貸主と借主の双方が合意すれば期間満了後の再契約は可能です。
普通借家契約と違い、契約更新がなく、借主との賃貸契約がすっきりと終えられることが最大の特徴です。
【定期借家契約のメリット】
- その1 修繕義務からの解放
普通賃貸借契約では契約更新が繰り返されるおそれがあり、その間、貸主は老朽化した建物の修繕義務を負い続ける。
定期借家契約であれば、賃貸借契約に明確な終期があるため、修繕義務を負い続けることはなく老朽化した建物を取り壊す計画を立てやすい。
なお建物老朽化を理由にした賃貸契約更新拒絶は裁判上これのみをもって正当事由とみなされることは多くはない。
- その2 賃料改定の容易性
普通賃貸借契約では契約更新が繰り返されるおそれがあり、その間、貸主は老朽化した建物の修繕義務を負い続ける。
定期借家契約では必ず契約に終わりがあるため、その際に更新するか否かをフラットな立場で交渉することができ、賃料改定をしやすい。
普通賃貸借契約では、更新拒絶は容易ではなく、賃料増額請求権を行使した場合でも民事調停、鑑定実施、訴訟を経る等する中で多額の費用がかかる上、仮に決着が強制的についたにしてもそうすると今度は借主が契約更新をしないこともあり、時間と労力を無駄にする可能性が高い。
- その3 期限を決めて嫌な借主を追い出すことができる
定期借家契約は終期が定まっており、原則更新がないため借主を一定期限経過と共にほぼ確実に追い出すことができる。
【まとめ】
以上のことから貸主側としては、特に、オフィスや店舗の賃貸にあっては、定期借家契約を基本に据えたほうがメリットが大きいといえるでしょう。
難点はこの制度の認知度の低さです。
参考HP 国土交通省作成 定期借家契約について
https://www.mlit.go.jp/common/001170116.pdf
参考条文
借地借家法
(定期建物賃貸借)
第38条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
2 前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
3 第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
4 建物の賃貸人は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、建物の賃借人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。)により提供することができる。この場合において、当該建物の賃貸人は、当該書面を交付したものとみなす。
5 建物の賃貸人が第三項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
6 第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。
7 第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
8 前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
9 第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。
第30条
(強行規定)
この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
(建物賃貸借の期間)
第29条 期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。