Q1.協議離婚した後に注意すべきことはなんですか?

【弁護士の解答】

財産分与の時効は離婚成立後2年以内です。この期間内に家庭裁判所を通じて請求をしなかった場合、あなたは配偶者の財産の半分を受け取る権利を失います。離婚時年金分割も離婚成立後2年を徒過すると、年金事務所へ改定請求できなくなります。協議離婚が成立した後、離婚成立後2年以内に年金分割の審判の申立てをして、離婚成立後2年経過後に審判が確定した場合は、審判確定後1か月以内に年金事務所に改定請求をしないと権利を失います。

Q2.子供が自分の子ではないとわかったとき、親子関係を解消するにはどうすればいいですか?

【嫡出推定】

妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定され、(民法772条1項)、婚姻成立の日から200日後又は婚姻の解消もしくは取消しの日から300日以内に産まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定されます(同条2項)。

【嫡出否認の訴え】

(1)嫡出推定を受ける子との父子関係を否定する場合には、嫡出否認の訴えを提起することになります(民774条)。

(2)嫡出否認の訴えの原告及び被告

原告は夫、被告は子又は親権を行う母親です(民775条)

(3)出訴期間

夫が子の出生を知った時から1年以内に提起しなければいけません(民777条)。この出訴期間を経過すると、嫡出否認の訴えによっては、父子関係の不存在を主張できなくなります。

【推定の及ばない子】

(1) 形式的には、民法772条の嫡出推定の要件に該当する場合であっても、一定の事情がある場合には、民法772条の嫡出推定が及ばないため、嫡出否認の訴えによらず、親子関係不存在の訴えを提起することができます。

(2) 「推定の及ばない子」にあたるかの基準

最高裁は外観説をとり、「妻がその子を懐胎すべき時期に、すでに夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らか」な場合としています。

最高裁(平成26年7月17日判決)は、「夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり、かつ、夫と妻が既に離婚して別居し、子が親権者である妻の下で監護されているという事情があっても、子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから、上記事情が存在するからといって、民法772条による嫡出の推定が及ばなくなるものとはいえず、親子関係不存在確認の訴えをもって当該父子関係の存否を争うことはできない」として、妻が子の法定代理人として提起した訴えを却下した。この判決には、2名の裁判官の反対意見がありますが、結論はかなり制限的な判断を下しているといえます。

【推定の及ばない子ではなく、かつ嫡出否認の訴えの出訴期間を徒過している場合、どうしたらいいか?】

上記最高裁判例が出る以前は、このような場合であっても、夫又は妻が親子関係不存在確認の調停申立てをなし、夫、妻および実の父との間で、子の父が夫でないことについて合意があり、またDNA鑑定等によってもそれが裏付けられる場合には、親子関係不存在の合意に相当する審判(家事277条)が下されることが多かったですが、現在では結論は流動的です。両者に合意があれば、合意に相当する審判による解決もなくはないといえます。

【参考条文】

民法
(嫡出の推定)
第七百七十二条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

(嫡出の否認)
第七百七十四条 第七百七十二条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる。

(嫡出否認の訴え)
第七百七十五条 前条の規定による否認権は、子又は親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。

(嫡出否認の訴えの出訴期間)
第七百七十七条 嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない。

家事手続法
(合意に相当する審判の対象及び要件)
第二百七十七条 人事に関する訴え(離婚及び離縁の訴えを除く。)を提起することができる事項についての家事調停の手続において、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、家庭裁判所は、必要な事実を調査した上、第一号の合意を正当と認めるときは、当該合意に相当する審判(以下「合意に相当する審判」という。)をすることができる。ただし、当該事項に係る身分関係の当事者の一方が死亡した後は、この限りでない。
一 当事者間に申立ての趣旨のとおりの審判を受けることについて合意が成立していること。
二 当事者の双方が申立てに係る無効若しくは取消しの原因又は身分関係の形成若しくは存否の原因について争わないこと。
2 前項第一号の合意は、第二百五十八条第一項において準用する第五十四条第一項及び第二百七十条第一項に規定する方法によっては、成立させることができない。
3 第一項の家事調停の手続が調停委員会で行われている場合において、合意に相当する審判をするときは、家庭裁判所は、その調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴かなければならない。
4 第二百七十二条第一項から第三項までの規定は、家庭裁判所が第一項第一号の規定による合意を正当と認めない場合について準用する。

 

Q3.配偶者に不貞をされた場合、慰謝料請求をしたいがどうすればいいか?

【弁護士の解答】

不貞をした配偶者とその不貞相手は、婚姻関係を破綻させた責任として、共同不法行為が成立し、不真正連帯債務(損害賠償債務)を負います(民法719条)。

ただし、たとえば配偶者が不貞相手に関係をしつこく迫ったことなど特別な事情がある場合には、不貞相手への慰謝料請求が認められない、あるいは非常に低い金額になることがあります。

【慰謝料請求訴訟の申立先(管轄)】

配偶者に対しては、離婚及び慰謝料を請求する訴訟は、人事訴訟であり、家庭裁判所に申し立てます。不貞相手に対しては、通常の民事訴訟になるため、簡易・地方裁判所に提訴することが通常の考えになりそうですが(民訴法136条)、両者は審理判断において主張・立証上密接な関連があるため、民訴136条の例外として、両者をまとめて併合して訴える限りにおいて、この訴訟も家庭裁判所に提起することができます(人訴法17条1項)。なお、先に配偶者に対して家庭裁判所で訴訟提起をした後で、不貞相手に慰謝料請求訴訟をする場合でも、併合できます(人訴法17条2項)。なお、離婚後の慰謝料請求訴訟は、簡易・地方裁判所に提起します。

【調停を先行する場合の管轄】

簡易裁判所・家庭裁判所は不貞相手のみに対する調停申し立ても受理する取り扱いをしています。配偶者に対しても同様です。

【不貞の慰謝料の相場基準】

100万円~500万円が相場です。当該不貞行為によって婚姻関係が破綻しなかった場合や、有責配偶者への慰謝料請求権を放棄した場合は、実際に離婚した場合などに比べて、慰謝料が減額される傾向にあります。

Q4.離婚慰謝料はどういった離婚原因の場合にもらえますか?

【もらえる離婚原因】

  • 不貞行為
  • 暴力行為または、虐待行為
  • セックスレス

【もらえない離婚原因】

  • 性格の不一致
  • 夫婦関係がすでに破綻した後で不貞行為があったとき

 

Q5.離婚慰謝料の相場や多寡の基準はどうなっていますか?

【離婚慰謝料の相場】

100万円~500万円の枠におさまることが多いです。

【慰謝料の算定基準】

  • 離婚の有責性の程度
  • 背信性(信義不誠実性の程度)
  • 精神的苦痛の程度
  • 婚姻期間
  • 当事者の社会的地位
  • 支払能力
  • 未成熟子の存在
  • 離婚後の要扶養

 

Q6.不貞慰謝料の損害算定の際の考慮要素にはどんなものがありますか?

X…被害者
A…不貞をした配偶者
Y…不貞相手

【X(被害者)とA(不貞をした配偶者)の身分関係等】

  • 年齢
  • 婚姻期間(結婚式の日、婚姻届出の日)
  • 子の年齢及び養育状況
  • 学歴
  • 職業、地位
  • 収入
  • 資産の有無、額

【AとYとの不貞(情交)関係が始まった時点でのXとAとの夫婦関係】

  • XAは婚姻関係か内縁関係か婚約関係か
  • XとAの夫婦関係は円満であったかどうか
  • 事実上破綻していたか
  • 事実上破綻と言えないまでも相当程度冷却していたか
  • 同居か別居
  • Xも別人と不貞関係にあったか

【AとYとの不貞関係が始まった経緯】

  • Yが婚姻の意思があると偽りAに言い寄ったか
  • AがYに「Xとは離婚する」と告げてYがこれを信じた
  • Aが自らに妻子があることをYに告げなかった
  • Yが積極的にAを誘惑した
  • Aが上司と部下の関係を利用してYに言い寄った

【AとYとの情交関係の内容】

  • 期間、回数
  • AとYのいずれが主導的であったか
  • AとYが同棲していたか、AがYの住居を借り受けていたりしたか
  • AとYとの間に子が生まれたか、Aは認知しているか
  • YがAの本妻(本夫)として振る舞っていたか


【XがAとYとの不貞関係を知ってからの態度】

  • XがYに対してAとの関係を断つように申し入れたか
  • XがAに対してYとの関係を断つように申し入れたか
  • AやYがXに対して「今後交際しない」などという念書を交付しているか
  • XはAを許しているか
  • XのYに対する報復行為の有無、内容
  • XがYを提訴するに至るまでの期間、事情

【AとYとの不貞関係によってX・A夫婦及び子に与えた影響】

  • XとAは離婚したか
  • XA間が悪化した原因がAYの不貞行為以外にもあるか
  • 離婚したとしてその内容は(財産分与及び慰謝料等の内容)
  • 子の親権者、監護者

【Yの身分関係等】

  • 年齢
  • 配偶者、子の有無
  • 学歴
  • 職業、地位
  • 収入
  • 資産の有無、額


近時の判例では、当事者の収入や社会的地位、学歴などを慰謝料算定の考慮事情に入れないことが多い。