【弁護士の解答】
相続財産管理人とは、以下のとおり複数存在します。
① 相続発生後の相続財産管理のための相続財産管理人(民法918条2項) |
② 相続人が限定承認した際に選任される相続財産管理人(民法936条1項) |
③ 相続放棄後の管理のための相続財産管理人(民法940条2項) |
④ 財産分離請求後の相続財産管理人(民法944条1項ただし書) |
⑤ 相続人不存在の相続財産管理人(民法952条1項) |
上記のうち、⑤の相続人不存在の相続財産管理人について説明いたします。
1.相続人不存在の相続財産管理人の業務内容は?
相続財産法人の代表者として選任され、家庭裁判所の監督下で相続財産の管理、換価、弁済、配当、特別縁故者に対する相続財産分与、残余財産の国庫納付などの業務に従事します。(民法951条、952条)
相続財産管理人の業務は、不在者財産管理人の条文(民法27条から29条)が準用されています。
2.相続財産管理人の選任申立権者は?
利害関係人又は、検察官の請求によるとされています。(民法952条)
利害関係人とは、相続債権者、相続債務者、親族、特別縁故者、事実上の財産管理者、被相続人の成年後見人であった者、地方公共団体の長などです。 |
3.相続財産管理人を選任する際の予納金額は?
数十万円から100万円前後に及ぶこともあります。相続財産から債務や管理人報酬を支払ってもなお余力がある場合、予納金は事件終結時に還付されます。
【主な事例】
(1)元後見人による相続財産管理人の選任
被成年後見人が死亡したが、財産を返すべき適切な相続人が見つからない場合、相続財産の保存の為、元後見人が申立をして、相続財産管理人を選任することがあります。(民法918条2項)
(2)相続放棄などによって相続人不在となった場合
被相続人の債権者が、相続財産管理人の選任申立をすることがあります。
【弁護士の解答】
受任してから、2カ月以内にすべきことは以下のとおりです。
1 |
相続財産の調査 ➡関係各所への聴き取り、照会によって行います。 |
2 |
管理方針の策定・財産管理の開始 |
3 |
財産目録、管理報告書の作成(民法953条、27条1項本文) ➡選任申立者が作成した財産目録をベースに、さらに独自調査したものを加 えて作成します。 |
4 |
相続債権者及び、受遺者に対する請求申出の催告の手続 |
【参考条文】
民法
(管理人の職務)
第二十七条 前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。
2 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。
3 前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。
(管理人の権限)
第二十八条 管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。
(権限の定めのない代理人権限)
第百三条 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
(相続財産法人の成立)
第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
(相続財産の管理人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。
(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)
第九百五十三条 第二十七条から第二十九条までの規定は、前条第一項の相続財産の管理人(以下この章において単に「相続財産の管理人」という。)について準用する。
(相続財産の管理人の報告)
第九百五十四条 相続財産の管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、その請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない。
(相続財産法人の不成立)
第九百五十五条 相続人のあることが明らかになったときは、第九百五十一条の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、相続財産の管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。
【弁護士の解答】
以下のような流れとなります。
1 相続財産管理人選任の公告
⇩(財産調査・管理開始)
2 相続債権者・受遺者に対する請求申出の催告の広告(2カ月)
⇩(債務の調査・弁済)
3 相続人捜索の広告(6カ月)
⇩(相続人確定・相続財産の換価整理)
4 特別縁故者申立期間(3カ月)
⇩(特別縁故者や、分与財産の確定)
5 財産引継ぎ
管理報酬の確定や、特別縁故者や国庫への相続財産の引継ぎ
【弁護士の解答】
以下のような方法で調査を行います。
【不動産情報の収集】
固定資産評価証明書・名寄帳を市町村役場から取得し、親族から聞き取りを行うなどして、不動産の所在を把握する。 ⇩ 把握した不動産情報に基づき、法務局から不動産の全部事項証明書を取得する。 |
【現地調査】現地調査に赴く際、以下の点について検討が必要です。
- 占有者の有無
- 鍵の保管者の確認、鍵の引継ぎ、開錠方法の検討
- 記録機器、マスク、手袋、スリッパ、懐中電灯等の準備
※現場写真を撮影することは必須です。 また、現地調査において、チェックすべき事項は以下のとおりです。
- 建物自体の状態を確認(倒壊の恐れがないかも確認しましょう。)
- 庭木、隣地への影響の確認
- 郵便物の確認
- 電気・ガス・水道メーター等の検針結果の確認
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調査後、不動産を管理する上で以下の手続が必要になることもあります。
- 貴重品の保管
①現金…相続財産管理人名義の口座を作成し、当該口座で現金を管理する。
②貴金属などの貴重品…裁判所に権限外行為許可申立をして換価を検討する。
③遺骨など…もし遺骨などを発見した場合は、供養することもある。
- 不用品の処分…裁判所から指示を受けて処分を検討する。
- 生前の定期契約の解除…定期契約を把握した場合、解除を検討する。